倭姫命の御巡幸
監修:皇學館大学名誉教授 岡田 登
発行:株式会社アイブレーン
- 定価 1,650円
(本体1,500円+税)
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伊勢の地にご鎮座まします天照大神は、『日本書紀』によると、はるか二千年以上も昔に、第十一代垂仁天皇の皇女、倭姫命により奉斎されたと伝えられています。
皇祖神である天照大神は初代神武天皇以来、大倭国の皇居内でお祀りされていましたが、第十代崇神天皇の御代に神威を畏れ皇居の外でお祀りされることとなり、皇女・豊鍬入姫命が大倭の笠縫邑に神籬を立ててお祀りされました。
その後、豊鍬入姫命の後を継いで天照大神の大御心に従って奉仕する〝御杖代(みつえしろ)〟となられたのが第十一代垂仁天皇の皇女・倭姫命でした。
倭姫命はさらに相応しい鎮座地を求めて、五人の重臣をはじめその士官たちと共に、天照大神の御神勅に従って、太陽が昇る東の方向へと進まれたのでした。
伊賀国からは北の方向へと進まれて、近江や美濃国を経て伊勢国へと巡幸し、伊勢に着かれた時に「この神風の伊勢の国は、常世の浪の重浪よする国なり、傍国の可怜し国なり、この国に居らんと欲う」とのご神勅により、五十鈴川の川上の地に大神をお祀りされたのが伊勢神宮のはじまりとされています。
倭姫命は大神がご鎮座ののち、神嘗祭や月次祭をはじめとする年中の祭りを定め、神田並びに各種ご料品を奉る神領を選定されたり、神宮所属のお宮を定めたりするなど、神宮の基礎となる祭祀やしきたりも確立されました。
ご遷幸地について、『日本書紀』は大まかなことしか書かれておらず、『皇太神宮儀式帳』や『倭姫命世記』の記述をもとに編集いたしました。古代の「史実」ではなく中世の「伝承」として受け止めた方がよいとされるところや、学説もいろいろとあるようですが、本書が倭姫命をはじめ「元伊勢」と呼ばれるご遷幸地に関心を寄せる方の参考になれば幸いです。(編者)